就職情報サイト「リクナビ」をめぐる問題はご存知だと思います。
学生がリクナビに個人情報登録。
学生がアンケートの回答を終えると、「クッキー」という学生の識別情報が得られる仕組みになっていました。

リクルートキャリアがそれを得ることで、学生のネット上の履歴情報を、より詳細に分析できるようしていたのです。
ここから、学生の閲覧履歴をもとにAIが導き出す、内定辞退率を企業に販売していました。

さて、この手法、少しは考えることが出来る人なら、もう情報は筒抜けだろうと思うところですよね?ビッグデータの活用は今に始まったことではありません。
就職、転職情報サイトに、AI分析システムはほぼ組込み済みと思った方がいいでしょう。
AIによって学習されたモデルに当てはまらない人というのは、どこに行っても一切採用されないのです。

そして、自ら登録しなくても、あなた個人の人間としての能力が点数化されている事態が、今起こっています。

新種のヘッドハンティングAI手法

例えば、ITベンチャーでは、ネット上の個人データをもとにエンジニアなどの能力をスコア化。
転職人材を求める企業向けに有償で提供しています。
SNSで発信したことなんて一度もない。なんて人はいないですよね?
SNSの公開情報をAIで分析し、隠れた優秀な人材を発掘するサービスがこれ。

あなたのSNSが狙われている

AIが分析するのは、ツイッターフェイスブックといったSNSやブログ記事。
キーワードを自動的に、機械学習という技術で抽出しているという。

例えば、あなたがSNS上で、システムエンジニアの仕事について投稿したとします。
AIはバラバラに投稿された情報をつなぎあわせ、人物像を生成。
得意な技術や技術セミナーへの参加歴、メールアドレスなどの情報を割り出していきます。
AIはその投稿を分析し、どのプログラミング言語を、どの程度使えるのか、10点満点で能力を評価するのです。

さらに、SNSで公開されている投稿は、内容だけではなく、言葉遣いや、投稿した日時までも分析。
その記事から攻撃性や自己顕示欲社会性なども「数値化」するのです。

こんなSNSは採用されない

  • 攻撃性がある人:暴言を吐いたりとか、他人を攻撃したりした投稿が多い。
  • 自己顕示欲が強い人:自分の写真を多く投稿したり、毎日、何投稿もする。こういう人は入社してから、会社の情報とかをネットに書き込んだりする傾向が強くなる。

また、AIが解析する際に用いる、独自のネガティブワードも存在します。
犯罪やコンプライアンス違反に関わる言葉だけでなく。
「は?」や「何言ってんの」など、何気なく発する言葉にも、対人関係のトラブルにつながるリスクが潜んでいるため、採用が避けられる傾向にあるという。

交友関係まで分析

SNSでは、交友関係が丸裸になりますよね?
そこでの友達の人柄だったり、やり取りなども筒抜けなのです。
現在、このサービスを利用している企業は、大手も含め100社以上あるという。

ネット情報で能力・人格を分析 どこまでOK?

法律では不正な手段による情報の取得や病歴、思想、出自といった、要配慮個人情報の取得は禁止されています。
しかし、このように、ネット上で公開されている情報などをベースに、個人を分析することは、現状の個人情報保護法では、規制の対象とはなっていません。
しかし、AIの分析などをするときには、利用目的、プライバシーポリシーなどで、企業がしっかりとどういう目的で使うのかということを記載しておけば、AIによる分析能力や人格等を分析することは、現状では認められています。
ただし、多くの利用者はプライバシーポリシーを読んでいないのが現実です。

海外ではどうなっているの??

EUでは、AIによる個人情報の分析について、分析の対象とされない権利、そして、分析結果に異議申し立てする権利が認められているんですね。
ヨーロッパでは、個人データの保護、それ自体が基本的人権として位置づけされています。
AIによって分析をされ、機械のみによって人生が左右される。
その場合、人間の介入を求める権利が明文化されました。
また、不正確な結果に基づいて不利益を被った場合、異議申し立てをする権利が明文化されています。
アメリカでも、この動きは加速しており、最近ではアマゾンがAI採用の利用を中止しました。

あとがき

今後さらに進化するAI。
ろくでもないな、と感じている人も多いと思います。
この国民総得点化が進むと、ウェブ上のコミュニケーションは委縮し、どんどん少なくなることが予想されます。

LINEやメッセンジャーでのやりとりも筒抜けの可能性は大なのですから。でも、避けては通れないところ。街中やカフェのWifiだって同じこと。
今後、こんなAIから身を守るAIの開発にビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。