ジェフ・ベゾスが1994年に創業して以来、オンライン書店からスタートしたアマゾンは、テック業界を支配する巨人へと成長。
ベゾスも創業間もない頃から将来に対する自社のビジョンを持ち、10年後、20年後に起こるべきことを予想していたのです。
創造する力も大切ですが、未来を想像する力ももっと大切です。
その想像する力で、ベゾスは1410億ドル(約15兆円)以上の資産を持つ、世界で最もリッチな人物になりました。
そこで、アマゾン特集2回目となる今回は、20年前の1999年。ノストラダムスの予言で世界で右往左往する世の中にあって、冷静なベゾスが、見事に言い当てていた予測を見てみましょう。
創業5年目の小さな会社が夢見たものは

1997年.アマゾン株は1株18ドルで公開。
そして20年前の1999年、まだアマゾンは創業5年目の小さなスタートアップ企業に過ぎませんでした。
一時のITバブルが終焉を迎え、まだ小さかったEコマース市場で模索していたのです。
ようやく本以外の商品を売り始めた頃。CEOのジェフ・ベゾスは野心に満ち溢れており、ベゾスはこの時すでに、自身の顧客第一主義なウェブサイトが、現在のアマゾンのように、すべてが揃うマーケットプレイスになるというビジョンを描いていたのです。
Web上で買えないものは無い世の中を予測
「人々がオンラインで買いたい物は何でも探しに来て、見つけられる場所を作りたい」
とベゾスはチャーリー・ローズ(Charlie Rose)のトーク番組で述べた。

テレビのインタビュー用に、急きょスプレーで書かれたもの。
ナショナル・パブリック・ラジオとマリスト(Marist)による2018年の調査では、ネットショッピングをする人は、まずアマゾンにアクセスする傾向にあることが判明。
それは、グーグルやヤフーのような検索エンジンよりも先に。
生き残るのための2つの要素
実店舗が生き残るには、基本的な2つの特徴のうち、少なくとも1つを提供するしかないと予測。
この2つとは、「エンターテインメントの価値」、もしくは「即時の利便性」。
エンターテインメントの価値は、映画館のような場所がなくならない理由にあるとベゾスは語った。
「その体験は映画館に行ってこそ得られるもの。いつもレンタルというわけにはいかない。そうだろう?」
そしてアマゾンによって、アメリカ国内のショッピング・モールにある数千の店舗が「小売業の崩壊」によって閉店。
2017年のクレディ・スイスのレポートでは、ショッピング・モールの20~25%が今後5年で閉鎖する予想。
ベゾスの予測通り、ショッピング・センターと小売業者の多くは、生き残りをかけこの2つの道を模索しています。
エンターテインメントの価値を上げるため、ハイテクな体験を提供できるよう店舗を改装し、顧客を店舗に呼び込んでいるところも増えています。
一方、ベゾスがアマゾンに欲しかったものは、即時の利便性だった。
それがホール・フーズ(Whole Foods)の買収や実店舗を持つ試みにつながった。
ベゾスのビジョンは「配送のラストワンマイルを常に自身が引き受ける」ようにすることとワイアードは記した。
ホーム内IOTを予測

「電化製品については、こうなるという大きなイメージがある。たくさんの小さな電化製品がインターネットに接続されている……、たくさんのものがネットワークに繋がっている」
「電化製品の類についてはこうなるというイメージがある。たくさんの小さなものがインターネットに接続されて…たくさんのものがネットワークに繋がっているんだ」
ベゾスは1999年の時点でスマート・ホームの出現を予測していたのです。
アマゾンは現在、数え切れないほどのアレクサ搭載スマート・ホーム機器を提供しています。
Echoスピーカー、コンセント、時計、電子レンジ、ホーム・セキュリティ・システムなど。
書籍は無くならないものと予測

1999年、アマゾンとバーンズ・アンド・ノーブル(Barnes & Noble)は、書籍販売のライバルと見られていました。
ベソス
「1年後には間違いなく、誰もライバルとは思わなくなる」。
「今は明らかにライバルだが、我々が進んでいるのは別の道……、我々はeコマースの未来を作り出そうをしている。あちらはただ縄張りを守っているだけ」。
バーンズ・アンド・ノーブルが書店のままである一方、アマゾンでは書籍は増え続ける商品カテゴリーの1つにすぎない。
おそらく、電子書籍の黎明期に2つのブランドはライバルと見られていたが、増え続ける書籍を販売可能にしたアマゾンのKindleは、バーンズ・アンド・ノーブルのNookを大きく引き離している。
テレビを超える広告ビジネスの予測

「広告もネットでは非常に有効なビジネスモデル。広告のターゲッティングをより高度化することで、広告を顧客にとってより有意義なものすることができるだろう。放送では難しいことだ」
「広告もネットでは非常に有効だ。ターゲットを絞ることで、顧客にとってより有意義なものできるだろう。これは放送では難しい」
検索や買い物の履歴などの個人情報を使ったパーソナライズド広告は、今や当たり前。
テレビCMは減り続け、ますますデジタル広告に多くの資金が注ぎ込まれるようになっています。
アマゾンは順調に成長し、2018年後半にはグーグル、フェイスブックに続くアメリカ第3位のデジタル広告プラットフォームとなりました。
「待てない人」が多くなる予測

「パソコンが起動するのを2分も待つことほどイライラすることはない。2分経ったころには、何をするつもりだったか忘れている。だから、これは非常に重要なテクノロジー。実際、多くの人が取り組んでいる。いつか実現するだろう」
ベゾスは、パソコンの起動が遅いことが不満と、1999年の複数のインタビューで述べています。
チャーリー・ローズのインタビューで、 パソコンは彼が言うところの「インスタント起動(instant on )」を備えるだろうと述べた。
今、片手でさまざまな用途に使えるスマートフォンと、毎回電源を切る必要のないノートPCがベゾスの望みを叶えたようだ。テクノロジーはかつてないほど容易に利用できるようになった。
家庭用品のストックが無くなることを予測

ベゾスの2020年のビジョンの概要があり、そこでは
「店で販売されている商品、例えば主要な食品、紙製品、掃除用品など、ほとんどの商品は電子的に注文するようになるだろう」。
「ほとんど」は言い過ぎかもしれないが、オンライン・ショッピングは飛躍的に成長した。
アマゾンは生活必需品や家庭用品の購入先の第一候補となっている。
定期購入や、アレクサを使った音声による注文、Amazonnパントリーなど簡単に注文できるよう設計されたサービスがあるからなおさらだ。
もう大型モールに行って、大量のストックを買う必要はなくなるのだ。
ここまで1997年の予想でしたが、さらに時を遡り、ツイッターで拡散した1997年のジェフ・ベゾスの映像があります。初期のアマゾンをどのように構築したかについて話しており、ここでも、「ネット販売で重要なことは何か」を予想しているのです。
いかにインターネットをよく理解していたか、そして顧客が望むものを正確に提供することがいかに重要かを示しています。
1997年のジェフ・ベゾス。
アマゾンのアイデアはどこから着想を得たのか??
ベゾス「3年前、ニューヨークでヘッジファンドの仕事をしていたとき、ウェブの利用率が年に2300%増加しているという驚くべき統計に出会い、その成長の文脈でよいビジネスプランを考えようと思い、最初にオンラインで販売する最良の商品として本を選んだ」
ベゾスが本を選んだ理由として、
「オンラインで販売できる20種類の商品カテゴリをリストにした。そして最初に販売する最良の商品である本を選んだ」。
「本はある観点で信じられないほど特徴的なものだ。本には他のものに比べてはるかに多くの種類がある。だから、本は最初に売るものとしてベストだった」
CDよりも本のほうが多かった、と彼は言った。
「音楽は第2位で、常時約20万枚の音楽CDが販売されている。しかし、書籍は、世界中のあらゆる言語で300万冊以上が出版されており、英語だけでも150万冊以上ある。これだけ多くの商品があれば、文字通り、他には存在し得ないオンラインストアを構築することができる」。
20年後、アマゾンの倉庫には「まだ(創業)初日」と書かれた看板が掲げられていた。
そしてベゾスはインタビューの最後にこう言った。
「今から千年後、人々は振り返ってこう言うだろう。『20世紀後半はこの惑星の歴史の中で、本当に素晴らしい時代だった!』と。
あとがき

未来を予測したジェフ・ベゾスですが、若手起業家へ向けた未来志向を持つための4つのアドバイスがここにあります。
1.顧客第一であること
「一番大切なことは、顧客第一であること。だが顧客を満足させてはいけない、絶対に喜ばせるのだ」
2.情熱的であること
起業家は情熱的でなければならない。「あなたは、情熱的な人たちと競争することになる」
3.大きなリスクを取ること
- 「リスクを取ろう。リスクを敢えて取るようにしなければならない。もしあなたがノーリスクのビジネスアイデアを持っているなら、それはおそらく、もうどこかで誰かがやっている。」
- 「うまくいかなそうなことにチャレンジしなければならない。いろいろな意味で実験になる」
4.そして失敗すること
「大きな変化をもたらすためには、大きな失敗が必要。失敗しなければ、大きく動くことはできない。激しく動かなければならない。そして失敗する。だが、それでいい」

放送作家・演出家・地域戦略アドバイザー
1977年生まれ 熊本県天草市出身
株式会社ドーンマジック 代表取締役