水族館来場者ランキング

  • 1位 沖縄美ら海水族館 323万人  1万0,000トン
  • 2位 海遊館 230万人 1万1,000トン
  • 3位 名古屋港水族館 196万人 2万7,000トン
  • 4位 ??? 172万人 3,000トン

4位は…
そう「新江ノ島水族館」
上位3つと比べ水槽の総水量が大幅に少なく、圧倒的に小さな水族館ですが、多くのお客様を集めています。

なぜこんなに、えのすいは来場客が多いのでしょう?

リピーターが多いえのすい

入場料は大人2,100円、小中学生が1,000円。
リピーターが多いのが新江ノ島水族館の特徴。
館内に入ると目の前に現れるのは、水面が大人の腰くらいしかない水槽です。

低い水面を覗きこむように魚を見ていると、突然大きな波が!
この水槽は江ノ島の南側に広がる岩場を再現したものでした。
その岩場から、まるで海に入っていくかのような体験ができるのが新江ノ島水族館です。

また「相模湾大水槽」では江ノ島周辺の海中を再現。
90種類、約2万匹の魚が泳ぐ姿は海の底にいる気分です。
新江ノ島水族館が日本の水族館で初めてイワシの群泳を展示しました。

この「地元のことを学習できる」 という要素もリピーターを獲得している理由だったのです。

学習ということで、地元小学校、幼稚園では課外授業にも使うことが出来ます。
そこで、えのすいが楽しいということが刷り込まれると…
また家族で来館したくなる。
というリピーター循環が起きるのです。

一度はつぶれかけたえのすい

昭和天皇が9回も訪れた江ノ島水族館。
日本発の近代水族館として江ノ島水族館が開業をしたのは敗戦から9年後の1954年です。

創設者は意外な人物でした。
映画会社「日活株式会社」の社長、堀久作氏です。

湘南をドライブ中に美しい景色に惹かれた堀久作氏は、ここに水族館を作ることを決断します。
当時珍しかった水族館は人気を博し、1962年度には240万人もの人が訪れました。

しかし老朽化と各地に水族館が出来たことによって入場者は1998年には30万人まで落ち込みました。

そこで2004年、全面リニューアルしたのが「新江ノ島水族館」です。
豊かな相模湾を再現する方針を打ち出し、入場者は見事にV字回復をしました。

また夜の水族館を始めたことによってもデート需要を増やすのです。
さらに、地元の漁師さんと仲良くすることで、新規の来場者が増えたのですが、では地元の漁師さんと仲良くすることの

江ノ島水族館における最大のメリットは何でしょう?

トップ企業のアイデア

珍しい魚を頂けるから

藤沢、茅ケ崎の漁師さんと連携して、漁師が釣り上げた商品にならない珍しい魚を譲り受けています。
その珍しい魚が、お客さんの満足度を高めリピートにつながったという。

また定置網漁に同行して、網に掛かった魚から、水族館に入れたい魚や足りない魚を分けてもらうことも。 さらの漁師さんから海の情報も仕入れます。

相模湾を知り尽くした漁師と付き合うことは飼育員の仕事に大いに役立つといいます。
漁師さんとお近づきになると珍しい魚を入手しやすい。珍しい情報も教えてもらえる。
飼育員のこんな努力が新江ノ島水族館の水槽を輝かせています。

リピーター獲得戦略

えのすいには、水族館の人気ものである、シャチやジンベイザメはいません。

なぜ??

相模湾に生息していないから。

相模湾に生息するものをしっかりと伝えるのが、えのすいのテーマなのです。

身近な相模湾の生態を見せてお客様を呼ぶ。
そのこだわりは大水槽以外にも徹底されています。

黄色やオレンジの色鮮やかなサンゴが広がる水槽。
南国の海を想像しますが、逗子沖の海を再現した水槽です。
身近な海でも知らないことは多くあります。
小さな窓から覗く水槽では江ノ島名物のシラスが泳ぐ姿が見ることができます。

大きな水槽では海藻が展示。
ここで再現されていたのは相模湾の岩礁。
魚だけでなく海藻まで主役にしてしまいます。

お客様の心を捉えるのはリアルな海藻の揺らぎ方。
水流を人工的に起こし波間で揺れる姿は美しい。
忠実に海の世界を作り込むからこそ、魚たちの生き生きとした生態が広がります。

珍しいものではなく、身近なものをより深く伝えることが感動につながり、そして学習にもつながる!
郷土愛にもつながる!

この戦略が多くのリピーターを生み出していました。

世界有数の漁場である相模湾

相模湾は浅瀬や岩場、深さ1,000mの深海まで変化に富んだ地形を持ちます。
さらに近くを通る暖流と寒流の影響もあり、世界有数の魚の宝庫となっています。
その数は1,500種類、日本近海にいる魚の36%にもなります。

リアル展示を実現するために行う事

えのすいの飼育員は年に数回、海に潜り近場の海を自分の目で確かめます。
常に相模湾の姿を熟知するためだといいます。

今の海底はどんな姿なのか、岩はどんなかたちか、魚たちはどんな風に生息しているのか。
このダイビングによる徹底調査が水槽のリアリティを支えています。

世界最大種のクラゲ展示

他にも身近な生き物の新たな魅力を伝える展示があります。
癒やしがテーマのホールにいるのクラゲ。
約50種類のクラゲの展示は世界でもトップクラス。
その半数は相模湾に生息しています。

新江ノ島水族館は60年以上も前に日本で初めてクラゲの常設展示を行いました。
海の嫌われ者だったクラゲを癒やしの存在として人気者にしたのです。

イベントを開催

毎月9日は「クラゲの日」
江ノ島の海でのクラゲを採集には、平日でも20名ほどの参加者がいるといいます。

網ですくうと顕微鏡で確認できるくらいの小さなクラゲが捕れます。
こんな体験が新江ノ島水族館のファンを増やしていきます。

何事でもこだわり抜く。
これがやっぱり一番大事。

お客様から

  • 「この水族館面白い」
  • 「こんなところにもこだわっている」
  • 「素敵だね、じゃあまた来よう」

という繰り返しになっていく。

「また来たくなる水族館」をキーワードに掲げ日々お客さんを伸ばしているのでした。

あとがき

かなりのエンターテイメント性を持ってお仕事されているえのすい。
その水族館の理念は、次に来た時「何があるだろう」と「また来たくなる水族館」がキーワード。

来たくなるためにどんなサービスを提供するか、どういう商品を展開しようか、どういう空間をつくろうか、毎日、365日間考えています。

どうお客様に伝えていくかも大きなポイント。
そのためショーにも力をいれているのです。

毎週1回、舞台で活躍するプロを講師として招いて、ショーアップを練習。
劇場の舞台公演と同じ発想。相当稽古しないと出られない。
演出家のOKがあり、その上でショーのオーディションをやります。
そして合格しないとショーに出られいほど厳しいものなのでした。