みなさん実家に帰省した時、必ず行くお店って決まってますか??

私は決まって

「地元で流行っているところ」

という目線でお店をチョイスしています。
そして、地方で商圏が狭いにも関わらず、いつ行っても繁盛しているお店ってありますよね。

なぜ??習慣化しているから?
地元民に愛されてるのは分かる。
でも、そこにもっと秘密があるはず…

今日はそんなお話です。

順風満帆な営業だったはずだが・・・

静岡県浜松市。ここに地元の方に愛され、売上が7年連続で伸びている鉄板焼き屋「濱松たんと」があります。
地元への想いからスタートしたという「たんと」。

2003年に鉄板焼き屋としてスタートした「たんと」は、
開店から数年で焼肉店や魚料理店などの店舗を増やし、2008年には法人化も果たしました。

しかし、一見、順風満帆に見える中でも売り上げは横ばい。
そんな中、飲食店をスタートした原点である

「地元浜松の食材をいかした飲食店で浜松を元気にしたい」

という想いが募り、リニューアルとブランディングを敢行したのです。

浜松の食文化を研究

浜松といえば餃子ですが、もっと突き詰めると餃子といっしょにホルモンを食べるのが一般的だったのです。
しかし、この文化は地元民にとっては当たり前で、浜松ならではのもでもなく、あえて指摘するまでもありません。

しかしながら、この2つのメニューを独立化し、看板メニューとしてリニューアルオープン。

浜松を強く打ち出したおかげで、一時お店の売上は伸びましたが、それも一時だけのこと。
そこでもっと深く自分の強みを探ることになったのです。

3C分析とポジショニングを探る

自社と直接競合する飲食店を比較し、30以上のポジショニングをしたにも関わらず、差別化のポイントや自社の立ち位置がはっきりしませんでした。
さらに進め、今度は飲食ではなく、浜松に根ざした企業に視野を広げポジショニングを実行。

すると立ち位置が明確になり、お店の目指す姿は

「ただの居酒屋」

ではなく、

「〇〇したくなる酒場」

となることを発見したのです。

その〇〇とは・・・

トップ企業のアイデア

「遠州人の自慢したくなる酒場」

と定めました。

マネしたいポイントはここ!

さらに顧客自身のことも深ぼりしていきます。
それは脚本家がするような仕事だったのです。

具体的には、

  • 生まれも育ちも浜松市
  • 年齢は47歳
  • 家庭をもった男性サラリーマン
  • 普段は真面目だが、浜松っ子が心待ちにする祭りには燃える祭り好き。
  • 浜松に来た大切な友人をもてなすときや、家族とちょっとしたお祝いで乾杯するときに、たんとを訪れ、遠州料理を自慢しながら楽しむ

といったの人柄や趣向までを設定。

コンセプトを元に具体的施策への落とし方

  • 「遠州料理」という新たなカテゴリを命名
  • メニューの大幅な改訂と絞り込み
  • メニューはお店の想いを伝えるツールとして活用
  • お店のコンセプトを歌にした「遠州男唄」を作り、代表が自ら歌うCDを店内で放送。

メニューの大幅な変更や新しい試みは勇気がいることですが、コンセプトがしっかりしていたら、ぶれることはありません。
それを基準に正しいのか正しくないのか判断を行うことができます。

お店の中では「遠州男唄」が流れ、メニューには遠州の魅力や遠州料理の説明を載せることで一貫してコンセプトを発信できるようになったのです。

お店の要となる「遠州料理」って何??

冒頭で書きました、浜松餃子とホルモンに加え、地元遠州の夢ポークを使った「ごろ焼」を新開発し、「遠州料理」3大看板メニューを提唱。

さらに地元民の嗜好と産地にこだわったメニューづくりとして、

  • 「かつお刺身」(地元ではマグロよりカツオが好まれるため)や
  • 地元三方原のジャガ芋を使った「じゃがバター」や
  • 遠州風のお好み焼き「遠州焼」などもメニューに組み込み、

この6品以外は、箸休めの料理として区分けしました。

顧客のキャラタクーを設定

遠州料理というカテゴリをつくると同時に、徹底したのは個人の好みを追求することでした。

  • 創作料理ではなく、素材の味を生かしたシンプルなメニュー
  • ころころ変わるメニューではなく、定番の「いつものメニュー」
  • 興味のないデザートはメニューから減らした。

こうしたブランディングの結果、以前までは5対5であった男女比から、男性客が97%と大幅に客層が変化。看板メニューも大人気となり、ほとんどのお客が看板3品をオーダーするようになったのです。

そうするとオペレーションも楽ですよね。

スタッフ離れを止めることにも成功

元々スタッフの入れ替わりが激しいことが課題だったところ、コンセプトである「遠州人の自慢したくなる酒場」がスタッフの行動指針となり、スタッフは遠州人が自慢したくなる人を目指すようになりました。
その結果、自信をもってメニューも薦めることができるなど、お店に誇りを持ったスタッフが育つことで定着にもつながっていきました。

「大事なのは、スタッフ全員に徹底させることですが、うちのブランディングは「遠州人の誇り」なので、シンプルでわかりやすかった。腑に落ちると、動き方、働き方がまったく違ってきます。何が遠州の誇りなのか、どうすれば自分が遠州の誇りになれるかを考えればいいのですから。だから全員が生き生きと輝いています。」
(出典:商業界2015年12月号)

私も飲食店を経営していますが、

やっぱりスタッフの教育が難しい。

 「いや教育が難しい」というと、
スタッフがポンコツのように聞こえますので訂正。
「教育するのが難しい」という経営者側がポンコツという目線です。

私は人を叱ること、説得することに関しては大ポンコツの自負があります。
苦手でやりたくない。そして面倒だし、諦めも入るため、「まぁいっか、普通にやってるし」と思ってしまいます。

さらに、自分の伝え方の悪さを棚に上げて言いますと、伝え方を間違えると、二言目には「じゃぁ辞めます」と言われる有様。
「このお店おれが今辞めたら大変でしょ??」なんて足元を見られてるんですね。おそらく。

そのため、スタッフを教育するスキルも大切ですが、これからの飲食はいかにスタッフの能力、マンパワーに左右されないかがキーになってくると思います。
とはいえ、裏を返すと浜松のように、スタッフの教育をしっかりしたところが生き残っていくんですね。きっと。