人口減少が進む中、また段階の世代が引退し通勤需要が減少する中、電車の運賃での売上アップは、今後考えにくいですよね。
どうしましょう?
例えば、岐阜県恵那市の「明知鉄道」では、営業不振から脱却するため、駅舎とある施設を一体化させたのです。
それが、老人介護施設。
地元民の利用者を増やす目的で駅舎に開設。
「明知鉄道」の「東野駅」と「極楽駅」の駅舎に老人介護施設を一体化させました。
極楽駅ってのも洒落が効いててナイスアイデアです。
恐らく、極楽駅の名前から発想したのと思われますが、施設はマンションのような外観で、1階が老人介護施設、2、3階が高齢者専用マンションになっており、どこかに移動する際、また家族が訪ねる際にも駅直結というのは便利なため、好評で利用者数の増加につながったのでした。
目次
そこで、本日は田舎駅復活を実現した鉄道会社のお話です。

前述しました駅前開発や利用者増加のアイデアで考えることといえば、駅ビルや駅前ロータリーを新築・改築するなど建造物を新しくすることでしょうか。
ところが、駅前開発において、日本では前例がなかった「あるもの」を開発し復活した路線があります。
それが、千葉県に市原市を走る「小湊鉄道」
田舎であることを逆手に取ったのですが…
そのアイデアとは…
トップ企業のアイデア

森
えっ?森??
通常、鉄道会社は駅前、駅ナカを開発しながら、駅の集客力・拠点性を高めることで、生き残りを模索しています。
そのため、副業ともいえる不動産業・観光宿泊業・飲食業・小売業にリソースを傾ける。
そして沿線開発を繰り返し、不動産の価値の高めるようにしています。
しかし小湊鉄道では、一般的な沿線価値の高め方とは一線を画した手法を試みました。
ズタボロだった小湊鉄道

小湊鉄道は、五井駅から終着の上総中野駅まで約39.1キロメートルの路線。
市の玄関駅となる五井駅から東京までは、電車で約一時間。千葉までだったら20分前後という、いわゆるベッドタウンとして発展してきました。
ターミナル駅の五井駅はJRと合わせて一日平均2万人の利用者があるものの、多くの駅は一日の利用者が100~500人。
なかには、数人にとどまる駅もある。
そして、小湊鉄道の泣き所は車両・駅・施設が老朽化している点。
もっとも古い車両は1961年製で、新しい車両でも1977年製です。
最新車両でも40年が経過しており、レトロマニアにはよだれ物ですが、安全第一を考えると、車両更新が急務になっています。
さらに、小湊鉄道は全駅でIC乗車券の対応が遅れており、ベッドタウンとはいえ、田舎丸出しの駅なのです。
ということから、他の鉄道会社と同様に、小湊鉄道も利用者の減少が続いており、ローカル鉄道が簡単に捻出できる金額ではなく、そのため、車両や設備の更新を一気に進めることは難しいのです。
田舎丸出しの駅ならもっと田舎へ

小湊鉄道の沿線は里山風景があちらこちらに見えます。
収入の先細りが見える中、小湊鉄道が打った手とは…。
駅前に森を作る事。

そして駅を作る際に、なんとアスファルト塗装をはがすというぶっ飛びよう。l
養老渓谷駅の駅前ロータリーの舗装をはがし、そこに土を入れて、木を植樹。
森を作ったのです。
一回の作業で終わりにするのではなく、常に手入れ作業をしており、10年かけて森の範囲を広げていく計画だという。
なぜ森なのか??

養老渓谷駅の特徴として、利用者の大半は観光客で、日常的に利用する通勤・通学客はいません。
秋が深まるにつれ、遠方からのハイキング客で賑わいます。
そこで、ハイキング客のために、山と駅とをつなげて切れ目のない風景をつくることにしたのです。
そして鉄道沿線の森づくりは、養老渓谷駅だけにとどまらないず、月崎駅前にも森を拡大。
そして「地球磁場逆転地層」として世界から注目される駅・月島駅には、森ラジオステーションを設置。 森押し路線というブランド路線を敷いたのでした。
観光客で利用者増加を狙い、都会化の逆を行く、森を築くことで資産価値を上げることにしたのです。
元々お客さんは多い路線

小湊鉄道はメインターミナルの五井駅まで森づくりを拡大しようとしています。
過去、地元住民が始めたプロジェクトで、休耕田を活用し菜の畑を作りました。
それが大ヒット。
鉄道沿線は春になると菜の花が咲き誇り、観光客や鉄道写真を撮ろうとする人たちが多く集まることでも有名になったのです。
その菜の花畑は、小湊鉄道と市原市、車窓から広がる里山の風景や菜の花畑は、いまや小湊鉄道にとってかけがえのない財産になっており、小湊鉄道は、長所をもっと伸ばすというアイデアで、もっとお客さんを呼ぶことを考えたのでした。
あとがき

観光客が増えることによって、利用者数の増加による収入は増えるかもしれません。
また認知も上がり、地価も上がる可能性もあります。
とはいえ、、、例えば自宅の周りが観光地で、人がわんさかいる場合どうでしょう。
あまり気分いいものではないですよね?
これが最近言われている観光公害です。
自治体の一つの目的として、観光客誘致がありますが、観光客が増えすぎるとどうでしょう?
しかも、お金を使わない観光客が増えている中、そのような人達が多く訪れるようになったとしたら。
今世界では「観光公害」という言葉で、増えすぎた観光客がもたらす地域への悪影響が議論されています。
それは観光地だけではありません。
東京の飲食店には、ご飯を食べずに長居する外国人が多いため(そういう飲み習慣ということも理解していますが)、特にかきいれ時の週末に来店し、500円のビールで2時間居座られた場合とんでもない悲劇を生んでしまいます。
このため、東京で週末外国人のお客を断るところが増えているのです。
日本より先に観光地化したギリシャやローマでは、外国人観光客による被害が深刻化しています。
ホテルやタクシーや土産物屋は、お金儲けのために、行政を味方につけ、御客誘致には、力を惜しみなくだしますが、古くから住んでいた住人にメリットはありません。
行政は、目いっぱい外国人観光客を誘致し、面倒な事は住民に押し付けている。
道路がいつも混んでいるのは序の口で、
いつも観光客が満員列車のように居るので、犬の散歩すらできないという。
近所の公園や路地で子供を遊ばせることもできないし、1人で外出させるのも危険となった。
夜中から明け方まで家の周りを外人がうろついていて、知らない言葉で話し声が聞こえている。
これはローマやギリシャではなく、京都や奈良や大阪、江ノ島で今起きている事でもあります。
観光客が増えても、良く思わない人がいることも考えながら地域活性を進めていきたいものです。

放送作家・演出家・地域戦略アドバイザー
1977年生まれ 熊本県天草市出身
株式会社ドーンマジック 代表取締役