ギャング映画が好きな人にとっては、馴染みのある言葉麻薬組織「カルテル」。

そのカルテルの本拠地であるメデジン市は、世界一デンジャラスな街として世界中にその名を知られていました。

1991年のメデジンは10万人に約380人が殺される世界最悪レベルの殺人率があり、その中でも最も危険な場所であったコムナ13(Comuna13)というエリアが…
なんと、今では国内外から観光客が訪れるメデジンでも人気観光地になっているのです。

2013年にウォールストリート・ジャーナルなどが実施したコンテストで「最も革新的な都市」1位になり、今では旅行者の間で最も注目を集めている街の1つです。
2015年の殺人率はなんと10万人に18人までと激減しました。

世界最悪レベルの治安の悪さから、劇的に生まれ変わったことが評価されたのです。
そんなメデジンがスマートシティーへの道を歩み始めたのは1990年代半ば。
スマートシティーという言葉が一般的になるよりも10年以上前のことでした。

生まれ変わった理由はテクノロジーの使い方

日本でもAIテクノロジーによって、生活を変化させる動きが多くありますが、とはいえ、まだ導入されて間もないものばかりで、どこにどんな効果が出るのか、普段の生活では実感できません。

また、ビッグデータによって、十分すぎるデータは集められていますが、それをどのように、生かすかどうか、スマートシティ化は役所で計画されるものゆえ、データから見えない肌感覚を掴めるかどうかが、カギになります。

ポイントは、仕事において自分が持つ能力と同じで、効果を最大限発揮できる場所に、テクノロジーをどう導入するか。
メデジンが生まれ変わる大きなカギとなったのは、テクノロジーそのものを目的化するのではなく、その先を見ていた市の姿勢にあるという点だったのです。そこでメデジンが焦点を当てたのが

こちら…

復活地方のアイデア!

最も恵まれない層

「メデジンは社会のあらゆる層を巻き込んで、コミュニティー自身が主導するやり方を模索」
メデジンのスマートシティーとしてのビジョンとして打ち出されたのがこちら

町の未来に関するより人間中心的なビジョン」

ミニ図書館から始まった復活劇

図書館が始まったは1993年。
「貧困層の人も文化に触れる機会を」という目的で政府指導者や学識経験者、市民団体や企業経営者らが協力し、貧困地域に図書館を建設。
住民たちは本を持ち込んで、一緒にミニ図書館を作ったのです。
そこでは、本を読むだけではなく、未来のメデジンについて語り合うことが出来たのです

この語り合いの場から出てきたまざまなアイデアが、メデジンを変える野心的な計画の基礎を形成しました。
今では、街中に図書館が建設され、特に有名なのが貧困地域に近い公園に立つスペイン公園図書館。

川沿いの幹線道路を約80キロにわたって改修した緑豊かな遊歩道と共に、今や世界中から観光客が訪れているのです。

貧困地域に活躍機会を与えたケーブルカー

メデジンは山に囲まれており、都市の中心部は盆地に位置しています。
貧困地域は山側の斜面にあるため、それまでは市街地に出るのに、バスで片道2時間かかっていたのです。
ロープウェイ導入によって、貧困層が暮らす山沿いから市中心部にへの通勤時間は2時間から20分程度に短縮。

これで貧困地域の人は都市から隔絶されることなく都市の中心部にアクセスできるようになったのです。
このような交通網の整備によって、貧困地域の人が疎外されていないと感じさせる連帯感を生み出しました。

また、巨大な屋外エスカレーターも設置。

エスカレーター設置で激変したスラム街

2011年に市が公共の無料エスカレーターを設置。
それまで住民らが35分かけて坂道を上り下りしていたのが、このエスカレーターによってたったの6分に短縮されたのです。

全体が見渡せる地域の頂上付近までエスカレーターが伸びています。
街や駅へのアクセスが容易になり、住民の生活は一気に改善されたことで、治安の改善や、労働環境も変わったことで生活力の底上げにつながりました。

警備体制の強化

「コロンビア」という国名を聞くと、凶悪というイメージが付きまといますよね。
しかし、物凄く安全な街なのです。

今や、駅や市街地、観光地には多くの警察や警備員が配置されており、住民はもちろんのこと、観光客も安心して街を楽しめるのです。

メデジンを救うプログラムの費用はどうしたのか??

当時、経済については石油業界や衣料品業界など堅調な企業がありました。
メーカーは都市が再生すれば投資の見返りがあると信じて、税金の大半を負担したのです。

そして、残りを補うために市が目を付けたのがメデジン市公益企業。
同社はメデジンで水道やエネルギー、通信、廃棄物管理といった公益事業を行うだけでなく、コロンビア全域、さらに中南米各地でも民間企業と競合して事業を行っており収益を伸ばしていたのです。

そのため、メデジン市公益企業は、市の予算の年間4億ドル増に貢献し、市はこの増収分を貧困対策に集中させました。
南米では開発・サービスに割り当てる予算は全体の4分の1が一般的ですが、メデジンの場合は2000年代前半以降、平均で予算の半分以上を計上したのです。

交通規制の強化

大気汚染の原因にもなっていた激しい交通渋滞に対応するため、メデジン市は2009年までに、交通事故が多発する交差点に計40台のカメラを設置しました。
1日100万台以上の車のスピード違反、信号無視、無理な車線変更を監視しています。
このシステムは、違反車両のナンバープレートを読み取り、違反切符をメールで送付するもの。

その効果から2009年からの5年間で交通違反は80%も減少しました。
さらに80台のスマートカメラが、渋滞の原因となる事故や車両故障を検知し、警察に通報。
交通量が多いエリアには電子掲示板が設置され、分刻みで最速ルートが表示されるようになっています。

スタートアップを支援する政策

製造業への依存を低下させるため、デジタル経済の育成も進められました。
「ルータN」と呼ばれるイノベーション推進地区が設けられ、スタートアップに設立資金や専門家の助言などの支援が提供。
そして、市は公共事業の入札参加資格を緩和し、スタートアップが参加しやすくするようにしたのです。

その効果から、現在25カ国の170社以上がメデジンに支店を設置し、この3年間で約4000人の新規雇用をもたらす結果に。

スマートシティの強化

インターネット教育センターを48カ所開設し、住民が無料でパソコン講習を受けられるようにした結果、同士ではウェブサービスのスタートアップ企業が数々と誕生したのです。

また、行政サービスのオンライン化も進められており、現在は、水道や電気の使用開始、変更、停止手続きはほぼ全てオンラインで可能。

市の条例案やプロジェクト案もネットで公開されており、市民はオンラインで意見を表明できるのです。
こうした意見は市当局にとって貴重なインプットとなると同時に、住民には市政に参加しているという実感を与えられる効果が出ました。

生まれ変わった都市メデジン

このように環境の良さから、首都のボゴタからメデジンに拠点を移転する企業が増加し、街は治安のいい場所へ激変。
すると今度は住民たちの意識が変わり始め、この地域一帯を綺麗に色づけたり、公園をカラフルにしたり、明るい雰囲気を街に持たせるような行動を自ら実行する住民が現れたのです。

こうして街は活気づき、世界中から観光客が押し寄せるようになったのでした。

あとがき

ロサンゼルス観光で人気の、「ギャングのたまり場を覗くツアー」を知っていますか?
これと同じように、メデジンで人気なのが、デンジャラスゾーンのツアーだそうです。

メデジンでも、抗争や衝突が多かった危険なエリアであるコムナ13(Comuna13)に行くそうですが、ロスと違って危険なことはなく、今は綺麗な町並みのようです。