コロナでの自粛が続く中、ダウ、日本株は政府からの資金援助で株価を保っており、実体経済が全く動いていないにも関わらず、金融商品は堅く動いております。

そんな中、暴落しているものがあり、それが原油。
原油は商品先物として取引が出来る銘柄で、値動きが大きいことから、ギャンブルっぽい側面もありますが、利益を上げるには、かなり優秀な商品なのです。

18年ぶりの安値になった原油価格
(4月16日)

私たちが原油安に恩恵を受けることといえば、ガソリン価格でしょうか?
20年ほど前、ガソリン価格が一時80円くらいなんて時期もありましたよね?

いま、コロナ感染拡大で世界経済が悪化する中、株価は堅調に推移していますが、オイルは暴落しているのです。
とはいえ、暴落を取れていなかった筆者としては、この先どんなチャートが待ち受けているのでしょうか!?
それを考察する今回の記事になります。

なぜ暴落したのか??

最初の下落はコロナショックでダウと連動したものでした。
コロナ前の1月には1バレル=60ドルあたりでしたが、3月6日に急落を防ごうと開いた交渉が失敗し、さらに急落。

そして4月16日、18ドルを割り17ドル半ばまで下落、ほぼ4分の1の価格になり18年ぶりの安値になったのです。
そこで下落を防ごうと原産国が動きました。

まずは3月5~6日に開かれたOPECプラスの会合。
コロナショックでの暴落を受け、原油価格の回復を図るための協調減産が話し合われましたが、そこでロシアが反発し協議は決裂。
合わせて、サウジアラビアが、同国産原油の大幅値下げと増産を表明。

なぜロシアは減産しないの??

ロシアがお客さんを増やしたいから。
シェアを拡大しておき、アメリカ、サウジアラビアから、お客さんを取りたいのです。

そして、復活をかけた4月のOPECプラス。
日量970万バレルの協調減産を5月から行うことで最終的に合意。
3月に決裂したロシアとサウジが歩みあいを見せたのです。

しかし、これでも原油は上昇せず、さらに下落します。
なぜか??
消費国である中国のGDPが悪かったから。

中国国家統計局の発表によると、2020年4月17日、1月から3月のGDPが前年同時期と比較して-6.8%。
もちろんコロナでの減少は想定されていましたが、1970年代の改革開放以来初めてのマイナス成長。

全世界、アメリカ、欧米、日本の主要国も、もちろん大幅なマイナスで、10%以上が予想されていますので、比較すると中国は良いのでは??
と思うところですが、水増ししている可能性があるのが、そう中国なのです。
コロナの感染者数も水増し、経済指標も水増し。

そこで、各国ではいま衛星を使って中国の動きから経済がどれくらい動いているかを監視しているのです。
例えば、香港の港をGPSでみて、タンカーがどれくらい並んでいるのか?
稼働しているのか?物流のトラックは動いているのか?
これによると、いまだ中国経済は眠っている状態だったのです。

下落で産油国は耐えられるの??

埋蔵量・生産量が2位のサウジアラビアは、国内の財政収入の8割を原油に依存しており、輸出総額の約9割が原油。
よって、原油の価格が下落するのは、収入が減ることにつながり死活問題。

現に、今年1月と比較すると4分の1までにも値が下がっており、さらに、需要が全くない状況が続いています。
原油が売れないとなった場合でも、国家予算を確保しなければなりません。

そこで、サウジアラビアは産出費用を賄うために、株式を売却するのです。
国際通貨基金(IMF)によりますと、国の財政収支が均衡する原油価格サウジアラビアが1バレル83ドル台。
ロシアが予算で設定した水準は42ドル台。
現在、20ドル近辺のため、ほとんどの主要産油国では財政を支え切れません。
そこで、株式を売却し資金を作る方法が考えられます。

中東やロシア、中国、日本もそうですが、稼いだお金をアメリカ株やファンドに投資している場合が多いのです。
ロシアでは、今回の原油安を前にして「最大10年は耐えられる」と強気の姿勢を示しており、アメリカ株が半値戻しまできた現状、ここで資産を売却し、現金に戻しすことが想定されるため、ダウのもう一段の下落。
ダウ下落につられ、もう一段の原油下落が起こる可能性があるのです。

オイル価格は上昇しなくてもいいのでは??

世界の3大産油国の生産量を見ると、シェールオイルの生産拡大で、アメリカが1位になっています。
サウジアラビアとロシアにしてみれば、協調減産すると「アメリカが増産して得をするだけ」という不満が残ります。

そこで今回、アメリカに対し減産への協力を呼びかけましたが、トランプは減産に応じなかったのです。
「原油安でシェールの生産量はすでに下がっている」と主張。
アメリカの減産が無かったため、オイルが下落したのです。
とはいえ、なぜアメリカは減産しなくても良いのでしょう??

世界一の原油国アメリカ

原油といえば中東というイメージがあり、多くの人は、原油のほとんどが中東で生産されるとイメージしています。
しかし、現在、世界でもっとも多くの原油を生産しているのはアメリカであり、1日あたり1940万バレルの生産量。
2番目はサウジアラビアで1200万バレル。
3番目はロシアで1100万バレル。

サウジアラビアは2013年までトップの生産量でしたが,

アメリカはシェール(頁岩)層から原油を採掘する技術から、2018年には世界1位の産油国になっています。
全世界の原油生産量は9200万バレルとなるため、アメリカ、サウジ、ロシアの3カ国で約4割の世界シェアを占めます。
ということから、アメリカは自国で産出し、自国で消費できる体制になっているのです。

アメリカで1日あたり1940万バレルの原油を消費しており、この消費量はEUと日本を足しても敵わないのです。
ということからも、原油市場におけるアメリカ存在感は大きく、アメリカは世界で最も石油を生産し、そして石油を消費する国といえます。

原油の需要はこれからあるのか??

新型コロナウイルスの影響で、未だに都市封鎖は行われています。
都市封鎖だけはなく、企業、旅客機、製品生産で使うオイルは少なく、1日当たり2000万バレルぐらいの需要が落ちていると想定されています。

一方、OPECプラスでの合意によると、日量970万バレルの減産。
これでは追いつかないほど、需要が減少するということです。

そのため、しばらく下押しの圧力が多く、一気に上昇するという局面は来づらいと考えます。
さらにIMFによると、リーマンショック時がそうであったように、景気が元に戻るためには、2,3年必要であり、少なくとも夏ぐらいまでは、上がっても1バレル20ドル台でうろうろすると思われ、今年いっぱいは低空飛行を続けると考えられます。

原油は下がった方が経済は潤う??

コロナでの下落によって、1バレル=60ドルから20ドル程度まで下落したのですが、単純に、消費国から産油国に支払われる石油の販売代金が3分の1になったことになります。
そのため、原油価格が下落すると、その分消費国は得をすることになり、消費国はより安価にエネルギーを入手できるため、原油価格の下落は、経済の活性化につながります。

そこでアメリカを見てみますと、産出、消費が世界一です。
現在ドルを大量に刷って国内経済の維持に努めています。
そのため、いまオイルによって外貨を稼ぐ必要はなく、国内経済を元に戻すことに力を入れるはず。

アメリカでは、原油価格が1ドル下がると、個人消費が1%増加するともいわれており、今後、オイルを元の価格まで引き上げる事は得策ではないのではないでしょうか?

また、アメリカで原油の他、石炭、天然ガスなどを含めた、資源全体を見ますと、エネルギーのほぼすべてを自給できる状況であり、例え、再びオイルの需要が上がっても、他のエネルギーも同時に増えるため、価格の上昇は考えにくい。

オイル発のリーマン再来はあるのか?

新型コロナの影響により需要が減衰し、原油価格の下落によって、特に心配されているのが、アメリカのシェールオイル企業の破たんです。

これまで好調だったシェールオイルの中堅企業ホワイティング・ペトロリアムに民事再生法が適用。
株価は前日比-44.5%となり、多くの投資家が失望による恐怖からシェールオイル企業を始めとしたエネルギー部門から手を引き始めたのです。

シェール業者の採算ラインは1バレル40~50ドルで、現在は20ドル前後。
現在の値段が続くと、新規投資が行われず掘削や製造の設備が出来ません。
もちろん民間企業のため、国家の後ろ盾はなく、原油価格に経営が左右されます。
そのため、シェール業者の社債は、元本や利息の支払いが滞るリスクの高い債券である「ジャンク」に区分されることが多いのです。

とはいえ、世界的な低金利がづつく現状。
リスクを取ってでも、利回りが高いジャンクは投資家に人気でした。
そのため銀行やファンドなどの金融機関も大量に保有しています。

今後、原油安によるシェール企業の業績悪化が進むと、こうしたジャンク債のデフォルトにつながる恐れがあり、倒産が連鎖すると、それを保有する金融機関が打撃を受け、リーマンショック級の危機に発展する可能性もあるのです。

ジャンク債の貸出債権を束ねた金融商品によって、2007年には起きたリーマンショック。
サブプライムローンに投資するというジャンクな金融商品が、不良債権化したことで、世界同時株安が起きました。

そこでFRBでは、シェール企業の社債デフォルトに端を発するリーマン再来を警戒し、今回の政策金利引き下げや量的緩和をスピーディーに敢行。
オイル危機を起こさないように、早めの対策をしたのです。

原油下落と日経平均の関係とは?

原油の価格が下落すると、個人消費が増え、儲かる企業が増えるのが一般的です。
ガソリンを大量に消費する航空業界や運送業界、火力発電の電力会社はコスト削減が期待できます。
プラスチックを原材料とするメーカーも、原価が安くなることで利益が増えます。

とはいえ、原油の下落と日経平均を見てみますと、そうとは言えない関係がありました。
1990年~2019年までの間で、原油価格が前年比-30%以上になった年

  • 1991年:原油価格-8% 日経平均-3.6%
  • 1997年:原油価格-9% 日経平均-21.2%
  • 1998年:原油価格-7% 日経平均-9.3%
  • 2008年:原油価格-5% 日経平均-42.1%
  • 2014年:原油価格-9% 日経平均+7.1%
  • 2015年:原油価格-5% 日経平均+9.1%

例外として2014年、2015年は原油価格が下がっているのに、日経平均は上げています。
理由として、アメリカがシェール層から原油を抽出できるようになったため。

過去の相場を見ますと、原油価格が暴落するのは、世界の景気が悪化するというサインという見方になるのです。
そのため、原油価格の暴落に合わせて、リスク資産の売却が加速し、売り圧力が強まる傾向にあります。

さらに、原油価格が下落すると、原油を扱うエネルギー関連企業の株価が下落します。
エネルギー関連企業が多いアメリカにとって、それらの企業の下落は、連動する株価指数の下押し圧力を強めることになり、市場に参加する投資家の不安を煽ってしまいます。

原油価格の目安は25ドル

上記の理由によって、しばらくは価格は上昇しないものと思われます。
そこで、チャートを見てみますと、ポイントになるのは、28ドル。
3月のOPECプラスでの減産を受け、上昇に転じた28ドル。
そして2016年に暴落時につけた25ドル近辺。

この辺りを目安に、最大14ドルあたりまでの下落を想定して、上がったら戻り売りを行うショートを打ち込む作戦が良いのではと思います。

自粛が解除されても…

原油の下落に応じて、海外旅行の燃油サーチャージが無料になりました。
しかし、自粛が解除されたとしても、今後お金を使う人はどれだけいることでしょう?
いつこの不況が来るか分かりません。

過去、不況から脱出するまでに、2,3年近く時間がかかっています。
それは、お金を貯めておかなきゃというムードから。
景気そのものも悪化は確実に起こるため、物価も下落する。
例えガソリン価格は安くなりますが、需要が減少すると思われ、しばらくは原油の価格は上がらないのではないでしょうか。