あなたはサムライジャパン日本代表の監督だとします。
WBC決勝戦。
9回裏0対1で負けている状況。
攻撃は残り1イニング。

そこで選手にはどんな言葉をかけますか??

ここで選手達に話す言葉が今回ご紹介します「ペップトーク」なのです。

ペップとは英語で「元気・活気」という意味。
試合前のロッカールームで緊張し身震いする選手たちに向かい、監督やコーチが心に火をつける言葉がけのことをいいます。

簡単に言えば、やる気に火をつける言葉の技術です。

五輪アイスホッケーの試合で使われたペップトークとは??

本書で紹介されているのは、冬季オリンピックのアイスホッケーの試合。
オリンピック決勝ラウンド。
大会4連覇中の無敵ソ連VSアメリカの試合。
エキシビジョンゲームでは3対10でアメリカが完敗という不安の中。

展開されたペップトークとは・・・

  • 「偉大な瞬間は偉大なチャンスから生まれる。お前たちのチャンスは今夜だ。それをその手でつかみ取ったんだ」
  • 「1試合だ。10 試合戦えばソ連が9回勝つだろうが、今日のこの1試合は違う。今夜は敵と肩を並べとことん 喰らいついていく。そして完全に封じ込めるんだ。必ずできる」
  • 「今夜は俺たちが世界で最も偉大なチームだ。お前たちはホッケーをやるために生まれてきた。今夜お前たちがここに来たのは運命だ。その時が来たぞ。ソ連の時代は終わった」
  • 「もういいだろう。いい加減、聞き 飽きた。  どこへ行ってもソ連はすごいという話ばかり聞かされ続けた。でももう古い。時代はお前たちのものだ。必ず奪ってこい!」

たった1分で相手をやる気にさせる話術だったのです。

結果的にアメリカは大逆転でソ連に勝利し、その後の決勝ラウンドも勝ち進みオリンピックで金メダルを勝ち取りました。

この試合は「氷上の奇跡」と呼ばれ、今でも語り継がれています。

とはいえ、日本ではあまり聞きなれない言葉ですよね??

なぜか??

ペップトークは試合前のロッカールームで行われることが多いため、なかなか私たちの目に触れる機会がないからです。
そんなペップトークを日本に普及させるべく立ち上げられた、一般社団法人日本ペップトーク普及協会の専務理事である著者が、1000本以上の映画の中で再現されたペップトークを分析。

さらにこれまでに培ったメソッドと合わせて紹介してくれるのが本書というわけです。

ペップトークには「5つのルール」と「4つのステップ」があり、これに沿って励ましの言葉をつくっていけば、誰でもたった1分で相手の心に火を付け、やる気にさせることができるようになると言います。

「ペップトーク」5つのルール

  • ポジティブな言葉を使う
  • 短い言葉を使う
  • わかりやすい言葉を使う
  • 相手が一番言ってほしい言葉を使う
  • 相手の心に火をつける本気の関わり

ポジティブな言葉を使う

ポジティブなものの見方や表現を使い相手に思いを伝えます。
そのことにより相手の心の状態がリソースフルになるのです。
リソースフルとは、自分の能力を最大限に発揮している状態のこと。
そんな心の状態が、相手の持っている力を発揮させやすくするというのです。

たとえばサッカーの試合で、「シュートを外すなよ!」といわれるよりも、「ボールが来たら思いっきり足を振り抜け!」といわれたほうが力を発揮しやすいのではないでしょうか?

それはビジネスの現場でも同じで、お客様からクレームがきたときに上司から、
「なにか問題が起こったらしいね。どうしていつも問題ばかりなんだ」と文句をいわれるより、「これは、もっといいサービスにしていくチャンスだ」
と前向きな言葉を投げかけてもらえたほうがやる気になるわけです。

つまり「ポジティブな言葉を使う」ことは、相手の不安や緊張を取り除くためには絶対に必要な要素だということ。

短い言葉を使う

ペップトークはこれから本番がはじまる、直前の時間がない場面で使われることが多いもの。
そのため、短い言葉で伝えると効果的。

長々とした言葉だと、どうしても不必要な情報や意味のない繰り返しの表現が多くなってしまいます。
しかしそれは、本番前の貴重な時間を浪費してしまう。

また、言葉を聞くことに集中力を使わせてしまうというデメリットがあるのです。

一方、短い言葉は、相手の心にすっと入っていくもの。
そのため、話す際には言葉の断捨離が必要になるのです。

たとえば伝わりづらい例が、次のような長い話。
「相手チームの攻撃は相当強い。かなり攻め込まれることが予想だれる。攻め込まれたときこそ我々はしっかり耐える必要がある。とにかく耐えるんだ。そしてがっちり守っていれば、必ずチャンスが訪れる。きついかもしれないが、そのチャンスをしっかり待って…」。

これだと聞いているほうは話の的を絞ることができず、
頭にも入っていかなくて当然。
それを、もっと伝わりやすくするためには短い言葉が有効だということです。

「俺たちらしく、がっちり守って、ワンチャンスをものにしよう!」

このほうが、「耐えてチャンスをものにしよう」というメッセージが、聞き手にもスッと入っていくということ。

わかりやすい言葉を使う

緊張していたり、不安になっていたり、気持ちが高ぶっている相手に対してわかりづらい言葉を使うと、励ましのチャンスが意味不明で残念なものになってしまうといいます。

だからこそ、普段から使っている「相手がわかる言葉」を使う必要があるというのです。
ちなみにこの考え方の背後には、ペップトークがアメリカで発展したという背景も影響している。

多国籍国家であるアメリカには、さまざまな言語を話す人たちがいます。
必ずしも英語が堪能な人だけとは限らないため、みんながわかるシンプルな言葉で伝える必要があったということです。

日本語で考えてみましょう。たとえば「勝負の世界は優勝劣敗とは限らないぞ!」と発言した場合、発言者当人はかっこよく思えるかもしれません。

ところが聞いている側の立場に立った場合、
「優勝劣敗」の意味がわからなければ、頭にも心にも入ってこないことになってしまいます。

そこでこうした場合は、「優勝劣敗」を日常的に使っている言葉に置き換え、「強いものが勝つんじゃない、勝ったものが強いんだ!」と発言したほうが伝わりやすいということです。

また、例えば「ミスするな」という言い方は、「ミス」というキーワード自体に「失敗してる姿」を連想させるので、言葉かけとしては逆効果だそうです。

人の脳は、常に文脈を適切に正確にとらえるワケではなく、イメージでとらえてることが多いんだそうです。
そのため、ワード自体にネガティブなイメージがあるものは表現として避けたほうがいい。

相手が一番言ってほしい言葉を使う

私たちは伝える側の立場でものをいいがちですが、大切なのは、相手の立場になりきってその人の精神状態を理解し、寄り添った言葉がけをすること。
ペップトークとは自分がいいたいことをいうのではなく、「相手がいってほしいこと」を伝えることだという考え方です。

そこで重要なのは、本番を前に、どんな立場、状況、精神状態なのかを相手の立場に立って受け入れること。
そして、本来の力を発揮できるだけのやる気を引き出し、なにに意識を向け、なにをしたらよいかを的確にアドバイスするべきなのだといいます。つまりペップトークとは、相手のやる気のスイッチを押す言葉だということ。

やる気のスイッチは人それぞれ。
スポーツの現場であれビジネスシーンであれ、誰もが同じ言葉でやる気のスイッチが入るとは限らないわけです。

そのため、「人によって一番いってほしい言葉は違う」ということを頭に入れておき、相手に適した言葉を考えることが重要だというのです。

相手の心に火をつける本気の関わり

前向きな言葉、あるいはやる気を引き出す言葉も、本気の関わりがあるからこそ相手に伝わるもの。
相手を「本気で応援する」「本気で成功してほしい」という思いを持つことが大切だということです。

そのため、普段から信頼関係をつくることが重要。
「この人にいわれたら絶対にやりたい」と思われる人であるからこそ、本番前にかける言葉の切れ味が増すという発想です。

やる気に火をつけるメカニズムとは??

「自分には価値がある」と感じた時です。
自分に価値を感じるときは大きくわけると2つあります。

・承認欲求(人に認められたいという欲求)が満たされたとき
・貢献欲求(人の役に立ちたいという欲求)が満たされたとき

貢献欲求は、アドラー心理学でも述べられていました。

いろんな本を読んできたけど、人の意志や行動の根本部分はシンプルで、どの本でも共通しているなぁと改めて感じます。

人はある行動を指摘されると、意識がそこにいき、その行動が増えるという特徴があります。
たとえば、「遅刻ばっかりして」「またゲームしている」など、ふえてほしくない行動を指摘するよりも、頻度は少ないかもしれませんが、「早起きできたね」「熱心に勉強してるね」など増えてほしい行動を承認するほうが人のやる気を引き出しやすいのです。

また、増えてほしい行動を承認することで、自分が頑張ってることをちゃんと見てくれている、気にしてくれているという気持ちが相手に生まれるので信頼関係の構築にもつながります。

なぜ日本人はやる気を出させるのがヘタなのか??

親や指導者から言われたきた言葉が否定的な表現が多かったからです。
すべての親、指導者がそうであるわけではありませんが、私たちが使う言葉は育った環境に影響を受けやすいからです。

もう1つは、相手を甘やかしたら調子に乗るのではと考えるからです。
否定的な表現でビシッとしめることに価値を感じているのもあるかもしれません。

肯定的な表現を使うことと甘やかすことの本質的な違いを知ることが必要になってきます。
応援してるのに表現が否定的になってしまうのは、なぜかという話で。

「私の時代がそうだったから」っていうのがほとんどだと思います。
「自分がやられたことを自分もやる」という考え方。

「前からこうだったから。」
とか
「自分のときはこうやって指導されたから」
っていう考えが蔓延しているからなのです。

あとがき

2011年7月にドイツで行われた女子のワールドカップサッカー。
決勝の相手は強豪アメリカ。なでしこジャパンは大健闘し、2-2でPK戦となる。
日本中の国民が固唾を飲んで見守る中、選手たちは極度のプレッシャーを感じていただろう。
そんな場面で佐々木則夫監督は選手たちに明るくこう言ったのです。

「思いっきり楽しんでこい!」

選手たちは佐々木監督のこの一言で勝たなければならないというプレッシャーから解放された。
その結果、試合を思いっきり楽しみ、見事、ワールドカップ初優勝を勝ち取ったのでした。

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