1991年に誕生した道の駅。その数は増え続けており、現在ではその数1134駅。
ユニークな取り組みで注目を集め地域活性化の拠点となっている駅もある一方で、全国で4割の道の駅が赤字に陥っている厳しい世界。
明暗はどこで分かれるのでしょう。
山口県萩市で年間10億円を売り上げている道の駅があります。
それは「道の駅・荻しーまーと」

成功のポイントはいくつかありますが、一番重要なことは、「観光市場」というコンセプトを廃止したことです。
全国に100カ所以上あるといわれている「お魚センター」は、旅行会社やバス会社などと提携して観光客を誘致していますが、案の定バックマージンが発生し、その分が売価に反映されています。
観光市場のコンセプトをやめることで、このようなことも無くなり、代わりに「〇〇が来店する店舗を作ること」をコンセプトに道の駅を作ったのが成功のポイントとなったのです。
その〇〇に入ることとは…
地方企業のアイデア

地元の住民が来店する店舗を作ること
他の道の駅と大きく違うことは、観光客ではなく、地元地域に目を向けているところです。
開業前の2000年の時点で、「観光市場はビジネスモデルとして終わっている」と結論付け、計画を180度転換しました。
たいていの道の駅は、仕入れ品のお土産と、簡易の料理を並べたような観光客を意識した店舗が多いものです。
その点「萩 しーまーと」は、1800平米の店舗にメインである鮮魚店を4店並べ、味噌、干物、漬物、地酒、お茶、和菓子、洋菓子、生肉店、青果店など、日常に必要な生鮮商品も取り揃えた公設市場にしました。
その結果、地域ファンの心をつかみ、買い物客の6割、地元の人が占め、観光客もその効果で、呼び寄せるようになりました。
この事からも分かるように、その土地ならではの、農作物や水産物は意外と供給されませんし、そういう売り場を地元の住民は求めているのだといいます。
オープンから16年経った今でも年間約140万人が訪れ、約11億円を売り上げる。
道の駅の年間売り上げの平均が2億円とされる中、これは驚異的な数字なのです。
どうやってコンセプトが生まれたのか??

当初、萩しーまーとは、全国各地にある観光海産市場「おさかなセンター」をモデルとしていましたが、観光市場は平日と休日、ハイシーズンとボトムシーズンで売り上げが乱高下するため、経営を安定させることが難しいと判断。
主なターゲットを地元住民に絞り、魚屋だけでなく八百屋や精肉店などの個店が集まる「公設市場」との位置づけにしました。
このほか、鮮魚売り場で魚介類を選び、館内のレストランで調理法を指定する「勝手御膳」という仕組みを導入したり、毎週金曜日に当日水揚げした鮮魚をトロ箱単位で提供する格安販売会を行ったりと、ほかの道の駅やお魚センターにはない取り組みを実施。
メディアに度々登場し、「地元住民が足繁く通う場所」という評判から、結果として観光客も集まるように。
繁盛店を作るしーまーとの手法とは??

道の駅や直売所の開設にあたり大切にすることは、徹底的なエリアマーケティングと競争優位性の確保。
不利な立地でもほかにはない取り組みを行えば人は来るし、差別化できる要素がないように思っても、探せば見つかるもの。
復活事例:熊本県芦北町「えび庵」

たとえば、2017年4 月に熊本県葦北郡芦北町で開業した直売所兼レストラン「芦北うたせ直売食堂『えび庵』」。
芦北町は八代海に面する人口約1万7000人の町。
この食堂があるのは主要道から細い地方道を約3km海に向かった岬で、商業施設の立地としてはかなり厳しい条件でした。
ここで注目したのが同地で捕れる天然エビだ。
芦北町計石は古式伝統漁法「うたせ網漁」が残る地域。
この漁法によって水揚げされる天然アシアカエビ、天然イシエビを主力メニューに設定し、天然エビ専門店として開業することにした。
消費者が日常的に食べている天丼やエビフライで使われているのは、ほとんどが東南アジアや南米産の養殖バナメイ種か養殖ブラックタイガー種。
国産地物天然エビを使用した天丼やエビフライ重、えびめしは大きな競争力を持つと判断したのです。
その結果、
地物天然エビに特化したことでメディアにも注目され、休日には行列ができるように。
開業後半年の月間利用者数は1500人、月間売上高は250万円と目標を大きく上回る数字を達成。
あとがき

調子いい道の駅のご紹介でしたが、全国には4割以上の赤字駅が存在します。
では、なぜ赤字に陥ってしまうのでしょう。
これについて、しーまーとの仕掛人中澤氏はこのように述べています。
「本来、道の駅の経営は、一般企業の経営に比べて楽なはずです。さまざまな補助が受けられるわけですから。それなのになぜ赤字になるかというと、やはり経営感覚がない方が駅長を担うケースが多いからではないでしょうか」
と。
「赤字分は基礎自治体の税金から補填されます。行政のお荷物とならないような経営努力が必要です」
私もよく道の駅に行きますが、使い勝手が悪いなあということを度々感じます。
例えば、ホテルに宿泊するとして、もう遅い時間だった場合、地元の居酒屋まで行く体力はないけど、地の物を食べたいという感情を処理する際、その矛先をどこにも向けられず、仕方なしにコンビニに行くのです。
道の駅の営業時間は決まって夕方まで。
遅くても19時くらいまででしょうか?
例えば、営業時間を22時辺りまでだったり、朝は7時からなど出来ないものでしょうか?
高速道路のSAが出来ており、人が少なくても営業できるスタイルを確立出来たら、もう少し街の利便性として、新しい形の「道の駅」が出来そうな気がしました。

放送作家・演出家・地域戦略アドバイザー
1977年生まれ 熊本県天草市出身
株式会社ドーンマジック 代表取締役