スニーカーの平均価格が急上昇したのは、1990年代にブームになったエアマックス販売の頃からでしょうか。
それまでのスニーカーといえば、「すにーかーブルース」に代表されるようなデッキシューズの延長のようなシンプルなものでした。
そこに機能性というアイテムを加え、2~30000円を超えるスニーカーがぼんぼんと売れ、世界中にスニーカーが溢れかえりました。
その後2000年代には、キムタク効果でブーツが巻き返し、日本でのスニーカー需要は一旦落ち着いたと思われましたが、世界中ではスニーカートレンドが継続しており、急上昇する中国経済に比例して、中国人の購入が増加。
そのため、数年で価格が暴騰しているのです。
例えば、極端な事例ですが、ナイキの「エアジョーダン1」シリーズで最も人気が高いものは、定価1499元(約2万2700円)の価格、2年後には7万元(約106万円)という値になるほど。
100万円を超えるスニーカーを履きつぶしたくはないですよね。
よって、スニーカーは「履くもの」と「売るもの」は別の物体として考えられているのです。
ウイスキーやロレックスと同じ資産価値として、値上がりする可能性が高く、その市場に目を付けたのが、アメリカのスニーカー販売アプリ「ストックX」。

ウェブ上でのスニーカーの売買といえば、今までも、日本でもヤフオクやメルカリなどの転売サイトは数多くあり、個人の需要を満たしていたのですが、ストックXが支持れされている理由として、「投資対象」として不可欠な要素を入れることによって、購入意欲をあおることに成功したのです。
それが…

トップ企業のアイデア
「商品はすべて本物」を保証している
2016年にアメリカでスタートアップした「ストックX」。
ストックXの月間流通額は7億5000万元(約114億円)で今後も増収予定。
米国の市場調査会社によると、世界のスポーツシューズの市場規模は、2025年に950億ドル(約10兆2140億円)を超えると予想されています。
(コロナが発生してなかった場合)
その、ビッグマーケットを引っ張るストックXの大きな特徴の一つとして「商品はすべて本物」を打ち出しているのです。
運営会社に「なんでも鑑定団」で見かける専門の鑑定士の人たちが一つ一つ本物か偽物かを審査しており、本物以外は流通させない仕組みとなっているのです。
ヤフオクでもメルカリでも偽物禁止を掲げていますが、真偽までは会社が責任を持ってくれません。
購入者にとってはリスキーなことで、高額商品で偽物をつかまされたというリスクがないのです。
コピー商品を作るのはアジアが得意とするもので、中国では今コピーの売り合い合戦が勃発し、情弱なものだけが損をする仕組みが成り立っています。
という私は、1998年、19歳の時だったでしょうか。
当時流行していたエアマックスを原宿の黒人ショップから購入しました。
品薄状態が続いており、店頭で見つかると即購入という流れが若者に出来ており、私も原宿で見つけたものだから、大喜びし、33000円という19歳にとっては超大金を払ったのです。
それから15年後。
ブームが去った後は、履かずに押し入れにしまっており、引越しの際に出てきたものを確認してみたところ、、明らかにコピー商品だったのでした…
劣化したソールがナイキのものではなかったのです…
バカは損をする典型的な例でした。
投資熱を加速させるチャート機能

このストックXで秀逸なのがチャート機能。
株価チャートのように、現在のスニーカーの値段、発売されてから今まで、いくらで取引されたのかなどをデータ化して公開しています。
というのも、「ストックX」の創業者は株式市場をモデルに、このサイトを作ったのでした。
チャートで今までの取引履歴が確認出来るため、今売っている値段が高いのか、安いのが一目瞭然。
例え高額であっても、株価と同じように、これからどんどん値があがる可能性もあります。
さらに全てのスニーカーが「いつ」「いくらで」「何足」売れたかの数字も全部公開されています。
そのため需要に合わせて、値段が適正化されるのです。
大手ブランドも「転売」に参入

ナイキやアディダスといったブランドでは、転売に頭を悩ませるのが日常でしたが、発想を転換しメーカー側もストックXを利用し始めています。
ナイキやアディダスでは、ストックXとタッグを組み、このサイトでしか買えない、限定モデルの発売をしています。
では、そこにどんなメリットがあるのでしょう??
新規ファンの開拓!
スニーカーブランドでは一般的に、メディアへのPR、自社の店やサイトなどで新作の発売を告知し、熱狂的なファンにしか刺さりませんでした。
しかし、「ストックX」で発売すると、幅広いブランドのファンが集まるサイトのため、スニーカーファン全体にPRでき、新規のファンを開拓できるのです。
大手ブランドの値付けアイデア
新作の値付けで秀逸なアイデアとして、「値段が決まっていない」ということがあります。
新規公開株のようにメーカーが設定する値段はなく、発売が告知されたら、数日間「入札期間」を作り、買いたい人は、好きな値段で入札。
限定モデルの販売を決めたメーカーは誰がデザインした、どんなデザインのスニーカーがどの期間、入札受け付けるか、何足売るかを告知します。
入札期間は、入札金額を変更したり、キャンセルは自由。
また、他の入札者の金額を知ることはできません。
そして、入札期間が終了後、金額の高い方から順番から購入権利を得ることができます。
限定販売のため、例えば、100足なら入札金額上位100位までが購入権利をゲット。
販売価格は、権利をゲットした入札金額の中で最も低いの値段になるのです。
スニーカー投資はいつまで続くの??
景気に寿命があるように、スニーカー投資も「バブルがはける」可能性は十分に考えられます。
投機熱を加速させた中国人たちが、景気減速によって手を引き始めたら、たちまち値崩れを起こすかもしれません。
とはいえ、不景気に強いものとして資産価値があげられ、ロレックスやエルメスのバッグなどは、もう数十年と値崩れとは無縁です。
なぜか??
需要と供給のバランスを守っているから。
作り過ぎない、売り過ぎない。常に品薄状態をキープしているのです。
恐らくナイキやアディダスも今後このようなシステムになるのではないでしょうか。
販売数を絞ることによって、消費者の物欲を煽り、次の商品に繫げていく戦略。
そのため、不況に負けないビジネスにこれからも発展していくと考えられます。
あとがき スニーカー消費を増やすには??
私もスニーカー愛好家で、家にあるのはスニーカーのみ。
とはいえ、好きという訳ではなく、選ぶのが面倒だから。
ニューバランス1500のブラックレザー27.5を延々と履き続けており、
ここ数年はスニーカー選びをしたことがありません。
私のように、おじさんになると服を選ぶことをしなくなった人が多くいると思いますので、その人に刺さることとは何か??
「スニーカーのサブスク」があれば利用したいと思います。
大体、1年履くと少しダメージが出てきますが、まだまだ履けるものです。
そこで、同じタイプのもので新品と交換してくれるサービス。
新規購入の半額位の値段だと嬉しいなあ。
メーカーは交換したものは、市場で売るか、アップサイクルして新しい製品に出来ないものでしょうか。

放送作家・演出家・地域戦略アドバイザー
1977年生まれ 熊本県天草市出身
株式会社ドーンマジック 代表取締役