うどんチェーン店「丸亀うどん」は、香川の田舎にあるうどん店のイメージを作り出すためにあえて、おばちゃんおじちゃんを雇用している。
というお話をこちらでもしましたが、

年商900億円、国内外1000店舗、既存店売上は対前年比100%以上を40か月以上達成……。
日本を代表するうどんチェーン「丸亀製麺」
実は最近丸亀うどんが一時のような勢いがなくなっており客足が伸び悩んでいました。

2019年2月5日に更新されたトリドールHDの2019年1月既存店売上高は、対前年同月比97.4%とマイナス成長になりました。
12月に続き2カ月続けてのマイナス。

出典
「丸亀製麺」運営のトリドールHD、2019年1月の既存店売上高は2カ月連続マイナス成長 注目小売店月次実績シリーズ | LIMO | くらしとお金の経済メディア

讃岐うどん専門店「丸亀製麺」で客離れが続いている。既存店客数は、16カ月連続で前年割れとなっている。 それを反映してか、決算が悪く2019年春に株価は急落。

それを見て私はトリドールの株を購入したのですが、その急落後、丸亀うどんは再生計画を発表したのです。

本日はそのトリドールの復活計画についてのお話です。

USJ再生の次はうどん

復活計画の請負人として白羽の矢を立てられてたのは盛岡毅さん。
森岡毅さんは経営が悪化していた「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」をV字回復させたことで知られています。
消費者の動向を鋭い視点で読み解く「マーケティング」が強み。
その緻密な分析に基づくマーケティングの手腕が買われたのです。

さて、消費者の動向を読み取った主な改革は2つ。

丸亀うどんがこだわっている「手作りの麺」を知っている人が全体の3割程度にしか満たないことが判明。 CMでは、「すべての店で粉からうどんを作っている」という、うどんそのものの魅力を訴求しました。

そしてもう一つ。
ここ数年、力を入れてきたのはいわゆる「トッピング」のフェア。
丸亀製麺をよく利用する人は分かっていますが、数ある外食の中から「うどん」を選択し、トッピングの美味しさに気づいてもらうことはなかなかできない。

CMで新規顧客をトッピングの旨さでリピーターにするには、従業員の意識改革が必要でした。

そこで、お客さんに対し、従業員はあるシンプルなことを徹底したのです。
そうしたところ、美味しさがより伝わってのですが…

ではそのシンプルなこととは…

トップ企業のアイデア

お客様の目をみて話すこと

麺をよりおいしく食べてもらおうと、揚げたての天ぷらを客に声かけしてアピールするなど、従業員の意識改革を促しました。
『揚げたてですよ!』と、”先に揚げたものがあっても、今揚げたてのものをお客様のお皿に入れる”くらいのつもりでお客さんを見てほしい。」

そして、お客さんの目を見るという基本をすぐに丸亀製麺の店員に徹底。

「空いたスペースに揚げた天ぷらを埋めていくのが仕事ではない。それは仕事ではなく作業なんです。作業をしたらだめで、本当はアツアツの天ぷらを消費者の口に放り込むという情熱をもって仕事をすると、『揚げたてですよ!』と、”先に揚げたものがあっても、今揚げたてのものをお客様のお皿に入れる”くらいのつもりでお客さんを見てほしい」(森岡さん)

お客さんの目を見ると言うことは、こちらも手を抜いた仕事が出来ないし、また自信を持って出されたものは、お客さんも美味しく感じるのです。

丸亀製麺の再生に向けたいちばんのキーワードは「原点回帰
「できたてを本気で食べさせる」
それを全ての従業員が誇りにして、そのために働く。
そのために動線を再設計する。
ブランドをつくるための人の動き方、動かし方という観点を中心に考えられたのです。

CM「ここのうどんは生きている」が生まれた背景

森岡さんが丸亀製麺で真っ先に目を付けたのが、うどんの「麺」。
丸亀製麺の中に入り、初見はどう感じたのかを聞いてみると、

「第一印象は正直、驚いた」
そして「(全店舗に)製麺機を置いて、粉からその店で作ったものをその店でしか出さない。
このありえない、悪く言えば非効率、よく言えばできたてへのこだわり。
このものすごい特徴を見た時に、「これはブランドができると思った」と語りました。

非効率がブランド価値なのです。

丸亀製麺は香川県の小さな製麺所に倣い、打ちたての味を届けようとスタートしました。
材料は、国産小麦と塩、水だけ。
その配分は厳密に管理されていて、温度も大切な要素です。
全ての店に製麺機があり、全国に3000人いる麺打ちができるスタッフが毎日、手間暇をかけてうどんを作っています。

森岡さんは市場調査に加え、統計や確率などを用いて独自の分析。
すると麺へのこだわりが消費者に十分伝わっていないことが判明。
そこでまず新たなCMを制作。打ちたての手打ち麺を前面に押し出しました。

制作された丸亀製麺のCMでは“すべての店で粉からうどんを作っている”という、うどんそのものの魅力を訴えることに成功したのです。

で、丸亀うどんはどうなった??

気付きは800の全ての店で共有され、お客の満足度が向上。
その効果はてき面。16か月連続で前年割れを続けていた客数がV字回復し、売上も着実に伸び続けているといいます。

粟田社長は、短期間の取り組みをこう振り返ります。
「こういう点が欠けている、見失っているよというところがあって。その見失っている点は何なのかというと、創業の原点である業態力。それを調査結果として教えていただいて、かなり力強い結果となってきていて、確実にお客様が戻ってきてくれた。それ以上に新しいお客さんが増えたんじゃないかなと」

マーケティングについて

「お客様の立場から、自分たちの会社が生み出している価値をちゃんと見て、常に再提示していく。本当に消費者視点になるということ」
とし、
「マーケティングの本質というのは、消費者がものを買う限りにおいては(USJの再生と)全く同じだと思っている」
と話しました。

日本企業はマーケティングが不足

消費者の動向分析から、より具体的な答えを導き出す森岡さん。
そこには、一貫したマーケティング哲学がありました。

森岡さんは
「日本人はモノを作るのは好きだが、目に見えない価値や感動をサイエンスするのが苦手。やはりマーケティングが不足している」
と指摘。

「説明できないものを解き明かして、誰でもまねができるようなノウハウに体系化する。いちばん伸びしろが高いところに経営資源を集中させて、勝つべくようにして勝つ」
というマーケティング戦略でした。

あとがき

森岡さん入社当時に730万人台まで落ち込んでいたUSJの年間集客は、森岡の着任年である2010年から上昇に転じ、2012年にオープンした第一ロケットのユニバーサル・ワンダーランドの集客効果を柱に、2013年には年間集客が1050万人を記録。

USJ時代は、後ろ向きのジェットコースターの発案やパークを大人だけでなく家族で楽しめる場所に転換するなどして、破綻寸前と言われていたUSJをたった数年でV字回復させた立役者です。

さらに
「もっと伸び代がある時期はないのか?」
と考え、予算がない中ハロウィンに目をつけたそうです。

来店者数やどんな人が来るのかという、数字を分析した上で新しい手を打ち出しヒットさせ、予算をかけないでUSJの業績を上向きにしました。
また値上げをしても来場者が減らない取り組みもおこなったということです。